[CV装着]稜線を歩く-004
- あおひこ
- 2022年7月13日
- 読了時間: 2分
2012/11/28
5Sに来て二日目のメインイベントは、抗がん剤の点滴をするための準備、カテーテル(点滴・採血用に血管内に直接入れる管//略称:CV)の装着だ。
******************
ピアスの経験も、ましてや外科手術を受けたこともなく、生身の身体の内部に初めて人工物が入ることには強い違和感を感じる。ボーグに同化されたキャプテン・ピカードになった気分だ(すみませんトレッキーズなもんで/TVドラマ「スタートレック」のマニアのこと、キャプテン・ピカード=「新スタートレック」の艦長)。
いつも寝ているベッドがせり上がり、明るい処置灯に照らされ、青いシートで上半身が覆われる。鎖骨の上から11〜13cmの白い管が、心臓に向かう中心静脈に挿入される。縫合固定された後、念入りに殺菌消毒が施され、透明の保護シートが装置全体を覆うように貼られる。
手術時間は30分ほどだが、徹底した感染予防のために慎重かつ沈着冷静に、実に手際よく作 業は進行する(担当ドクターDはテクニシャン)。
身動きできずにシートの下でじっとしていると、汗が噴き出してきてシーツを濡らす。なにも緊張したから、というわけではない。
5Sの室内温度は一年中27°C/低い湿度の設定、常夏の国である。差し入れてもらったネルの冬用パジャマでは、汗をかきまくるので、治療入院用の前開き下着一枚で過ごしているが、カラダがすっかっり夏仕様になりきっていて、簡単に毛穴が開いてしまう。
CVに連結された青管(点滴用)と白管(採血用)をまとめ上げ、防水シールで首回りを看護師さんに固めてもらい、バスタブのある共同浴室で入浴(入浴は、大部屋男子が月・水・金に割り当てられ、一人の所用時間は着替えもふくめて30分)。
突如、右鎖骨に開けられた穴から、透明の管が飛び出している姿を風呂場の鏡で改めて眺めていると、違和感はあるものの、不思議な感覚にとらわれる(途切れた管の先は枝分かれして、複雑に絡み合いながら、あらゆる方向に広がっていく。薬剤や器具、検査機器や分離装置、さらには研究機関や製造会社。長い年月を掛け、ものすごく沢山の人の力が集約した巨大な集積回路に見えてくる)。
→005に続く

Comments